2007年11月25日
『堀木エリ子の世界展』-和紙から生まれる祈り
会場:そごう美術館
会期:2007年11月3日〜12月2日
和紙のもつ強さと美しさを実感できる展覧会です。
堀木エリ子さんは、約20年前に和紙を扱う会社の事務職に転職。寒い中作業をする和紙職人と低迷していく和紙の業界に衝撃をうけ、自らが制作に携わるようになった和紙アーティストです。その彼女の和紙という素材を愛する気持ちと、可能性を追求する姿勢に、ひとつのものに卓越した人間の強さを感じます。
堀木さんの作品の特徴に、竹ヒゴやワイヤーなど異素材を使わず和紙のみで立体フォルムをつくる技術があります。こよりのような和紙の骨組みと、丸く柔らかく固められた表面が、明かりでふわっと照らされると、その蚕玉のようなカタチに、懐かしい温かさを感じます。会場には、インテリアに近い壁面の装飾や、過去のイベントやコラボレーションで使われた作品がブースに分けて展示され、また和紙漉きの様子がインタビューを交えたVTRで見ることができます。
過去より継承した大切な伝統や日本の文化を、そのまま次の世代に引き継いでいくことも大切ですが、それに満足せずに、新たな発展を求め実践することは、簡単そうでとても難しいです。彼女が20年かけて開発した新しい和紙の可能性に感心しつつ、またこの後の20年が楽しみになりました。
2007年11月23日
『乾山の芸術と光琳』
会場:出光美術館
会期:2007年11月3日〜12月16日
光琳の作品の視点から乾山を見ることはよくありましたが、乾山サイドから光琳を考えたのは、初めてでした。兄弟がともに協力して商いとして作品を制作していたことがわかり、とても嬉しい気持ちになりました。
尾形乾山は、京都の呉服屋の三男として生まれ、光琳は兄にあたります。1699年、京都の北西に鳴滝乾山窟を開窟。闊達なカタチと筆さばき、色彩で独自の作風を確立します。この展覧会では、近年の窯跡発掘調査の全貌を初公開、今まであまり知られなかった、王朝趣味や異国情緒あふれる懐石器なども展示されています。
青年時代の写しから始まり、丁寧に乾山のもつ様々な側面、足跡を紹介しています。あ、こんなこともしているんだ。こんな器もつくっていたんだ。いろいろな発見があります。
しかし、タイトルについている光琳の存在が、乾山と同等には感じられないかも。。。
あくまで、乾山の作品に絵付けをしたりして、兄弟で協力し合って仕事を高め合ったのです…ということが、納得できる程度かな。プロデューサー、ディレクターとしての光琳よりも、兄としての光琳の存在を感じることができます。
見ていて面白いのは、「あ、この器、うちにもある」「この器は、バイトしていた小料理屋で使っていたなぁ」などと、今もその卓越したデザインが受け継がれているのに改めて気がついたこと。もちろん乾山自身も、舶来磁器や着物の図案など、様々なものを模似し、影響をうけているに違い有りませんが、それらが300年たっても変わらず私たちの食卓の上にあがっているというのは、素晴らしいことです。
これから300年後、まだ変わらず食卓の上に使われているのかな。引き継がれていくデザインの魅力に感じ入りました。
2007年11月23日
『児玉希望展』 特別展 -日本画と写生の世界
会場:泉屋博古館 分館
会期:2007年10月27日〜12月9日
スゴい人だった…。たまたま頂いた招待券を持って行ったための感想です。
児玉希望は大正から昭和にかけて活躍した日本画家です。20代半ばで帝展に入選し、地道に活躍し続けました。初期はダイナミックな構成でありながら、非常に繊細で緻密な作品を描いていましたが、晩年は大胆な筆使いの抽象的作品へと移行していきます(児玉自身は、それらもあくまで具象であると語っていますが)。
日本人の作家、特に日本画。
日本に住んでいるのだから、たくさんの作家と作品を観ることができるのですが、いまいち観賞の仕方・ツボがわからないというか、ピンと来ないことが多いです。
しかしこの作品展では、展示されている作品は、日本画から油絵、スケッチ、水彩まで多数あるのですが、どれもじっとみていると、作中から「音」が聞こえて来て、ちょっとしたトランス状態を味わえました。
例えば、「陽溜まり」という山に抱かれた浜辺に船が並んで係留されている油絵の作品。
あ、この山の森の色は、春なんだな。空も春の青さだ。船がぬくぬくしているなぁ。。。と観ていると、潮騒が本当に聞こえてきます。
「枯野」という秋草と狐を描いた屏風絵。秋風に薄の穂が揺れ、虫の音がなくなか、何かの気配を気にしつつ狐が歩く獣の足音。
私がいつか見た風景、または誰もかがもつ原風景のようなものが、描かれている気がします。
作風は本当に多岐に渡ります。
しかしどれにも、モティーフや風景がもつ存在感や気配、音や匂いが感じられます。
あー、来て良かったな。
しみじみ感じました。
2007年11月23日
『芹沢銈介の造形』 - 色と模様
会場:菊池寛実記念 智美術館
会期:2007年9月29日〜12月16日
展覧会のタイトルの通り、美しい色と模様の造形にみとれてきました。
芹沢銈介は独創的なフォルムを描いた作家です。着物布などの図案に始まり、物語絵、装幀、字模様など、その活動領域は広範囲に渡ります。しかしどの作品も、「芹沢銈介だ」とわかる、のびやかなフォルムと鮮やかな色彩が、見る、そして使う人の心を不思議にとらえます。
彼の作品のフォルムは、身の回りの日用品であったり、食べ物であったり、自然であったりを、彼の眼のフィルターと、筆を通して独特な形状として生まれでたものです。これらは、モティーフを単純かして描かれているのではなく、その物ものが持っている本質を掬い撮り、あらためてカタチを与えられた結果であります。展覧会場を歩き観ていると、全ての作品中のモティーフが、ここにカタチを与えて表象された事に対して、嬉々としてその美しさとカタチの響き合いの合唱をしているような気がしてきます。
フォルムと色彩の響き合い。
空間のインスタレーション作品が現代は増えましたが、芹沢の作品には、作中にその緊張感が存在します。単純だけれども純粋なカタチとそこに与えられた色の生み出す面白さ、意外性、緊張感やときに喜びや和み、そんなんをみていると、もう泣きたくなってきます。
あー、私もこんなんなりたい。
しみじみ感じました。
2007年11月17日
『ベルト・モリゾ展』 -美しき女性印象派画家
会場:損保ジャパン東郷青児美術館
会期:2007年9月15日〜11月25日
週に一度ぐらいの割合で、通りすぎていた『ベルト・モリゾ展』 の看板。特にその時はひかれなかったのですが、ある日購入した本に挟まれていた栞が『ベルト・モリゾ展』 の割引券でした。そこに描かれた青みがかった白のやわらかい濃淡と少女の姿にひかれて、観に行ってきました。
ベルト・モリゾといわれても、ピンとこない人でも、エドヴァール・マネの『すみれのブーケをつけたベルト・モリゾの肖像』をみれば、そのきりっとしたまなざしが印象的な彼女の姿を思い出す事ができるかもしれません。1841年に生まれ、1895年に亡くなったモリゾは、古典から近代へ西洋画壇が変革しようとしているその最中に、大胆な筆触や色彩、平面的な画面で印象派を牽引した作家です。当時では珍しい(タブー視さえされた)ブルジョア階級出身の女流画家でした。
印象派のもつ色彩の美しさはもちろん、モリゾの作品はどれからも「優しさ」が感じられます。
今回の展示作品が家族や近親者を描いたものが多いこともあるかもしれませんが、そこには画家がモデルをみつめる優しい眼差し、生命の喜びを感じることができます。これがモリゾが女性だからと結びつけてしまうのは、あまりに短絡的すぎます。しかし、荒い筆跡と塗り残しのあるキャンバス(未完成作も含む)から読み取れる画家の痕跡からは、モティーフのフォルムの表面を描くのではなく、モデルの内面より溢出する何かを色彩で再現しようとしているように見えます。
画家として活躍しながら、30代前半で結婚し、子どもを産む。愛娘ジュリーをモデルに描いた数々の作品。男社会の画壇で認められるための努力。現代の女子からみてもカッコいい。作品から溢れる充足感は、そんな彼女の生き方が現れているのかもしれません。
2007年11月16日
『ムンク展』- The Decorative Project
会場:国立西洋美術館
会期:2007年10月6日〜11月30日
「『叫び』はないから…と伝えてくださいとのことです」
国立西洋美術館で働く彼女が、私のためにチケットと一緒に預けた伝言。
馴染みのお店でチケットを受け取ったときに、その伝言を聞いて、納得しつつも面白く思いました。
確かに、日本人にとって「ムンク=叫び」。「ムンク展」なのに、『叫び』がないなんて…。会場で、「『叫び』はどこですか?」と、観客に聞かれ続けているのかしら。
ちょっとワクワクしつつ、美術館へ行ってきました。
副題の 'The Decorative Project' が現すように、ムンクの作品における「装飾性」をコンセプトに企画された作品展です。
展覧会リーフレットに引用されている「〈生命のフリーズ〉は、全体として生命のありさまを示すような一連の装飾的な絵画として考えられたものである(エドヴァルド・ムンク「生命のフリーズ」より)」というムンク自身の言葉が示すように、ムンクは絵画制作を、作品1点1点切り離すのではなく、全体を包括的にみることで、大きな生命の流れを表現しようとしたようです。そのために、実現はしませんでしたが、ムンク自身の作品で構成された建築壁面の構想図が数多く展示されています。絵画はもちろん、壁面装飾用に描かれた下絵や、現存する建物の映像等が展示・紹介されています。
ムンクの作品には暗い不安や死の影がいつもまといついているように思われがちですが、実際には愛や生を主題にしたものが数多くあります。今回の展示では、普段あまり気がつかれないムンクの作品の表情を、包括的に作品をみるという展示方法により、十分堪能できることができました。ひとつの展示室の中心にたって、ぐるりと見回すと、そこに愛から孤独、生から死、女と男、ひとりの作家が考えた〈生命のフリーズ〉を感じる事が出来ます。作品同士が響き合い、「ムンク展」としてとても面白かったです。
『叫び』がなくても、十分に素晴らしい企画でした。
2007年11月16日
会社でいただいた出張土産(またの名を賄賂。出張のないデザイナーには地方特産品が良く効きます)。あまり期待せずに中身をあけて、その可愛らしさに驚いて、すぐに蓋を閉めてしまいました。
金沢にある「菓匠 高木屋」の『紙ふうせん』という和菓子。
色とりどりの丸い加賀最中の中に、ブドウやレモン、ワインなどのゼリーが入っています。通称、錦玉というそう。
この見た目、そして紙ふうせんという名前にちなんで、折り紙と風船の折り方の指南書が入っているのが心にくい。
味…よりも、この見た目にすっかり感動でした。
2007年11月12日
『メタルクラフト・コミュニケーション展』
会場:桃林堂画廊
会期:2007年11月6日〜11月12日
ものスゴい縁に呼ばれた作品展です。
作品展の「メタルクラフト」といタイトルの通り、金工作家4人のグループ展です。
出展作家は東北芸術工科大学にゆかりのある作家さん。ちなみに、私の母校でもあります。
作家の一人、佐々木里恵さんは、当ウェブギャラリーでも作品を紹介させていただいた空工房を主催している仙台在住のアーティストです。
※佐々木里恵さんの作品はこちら
同じ大学卒業で特に同年代の作家さんの作品をみる度に湧くのは、「みんな頑張っているんだなぁ」という、羨ましいような、あせりのような、元気づけられるような、微妙な心地。
作品に残る作家の痕跡のひとつひとつに、その人柄と成長、形作られていこうとする個性に溢れ、さらに次の作品が楽しみになりました。
さて、展示会場になったのは、桃林堂青山店にある工芸画廊。
ここには、私が高校時代に一緒にデザインを学んだ友人が働いています。今回の展覧会の担当がこの友人で、出展作家の佐々木里恵さんとの話しの中で、偶然、私が二人の共通の知人であることがわかり、観に来ないかと声をかけてくれました。
すごい、世の中って狭い。ホント、悪さはできない…。
ちなみに桃林堂は和菓子屋さん。
もちろん、眼だけでなく、舌も楽しみます♪
小鯛焼は、普通の鯛焼きに比べると小さめ。でもしっかり餡が入っていて美味しかったです。
カボチャのカタチの生菓子は食べるのがもったいなくって、とりあえず写真に。
餡をとても大切につくっていらっしゃって、どのお菓子も、ほろっと甘くて美味でした。
ご馳走様でした〜。

